【成果が出る】初級~中級管理職の思考法【15の銘記事項】|私たちの仕事術 #001
いつもありがとうございます。
本稿は、初級~中級管理職の方に向けて、筆者の経験から得た「考え方」をまとめたものです。
私はリーダー/マネジメントを行うようになって10年が経ちます。
関係会社に出向しており、帰任と同時に主任クラスに任命されました。その時、私は30代前半でした。
それから2年ほど経ち、係長クラスに昇進しました。その部署の歴史の中では比較的早い方だったと思います。
ある日突然、上級管理職から個室に呼ばれ、係長クラス職の内示を受けました。
その頃私は「自分はマネジメント職になるのかも」と薄々感じていましたが、まだ数年先のことだろうと思っていました。
なぜならば、当時の私が所属していた部署は特別大きな問題を抱えていたわけでもなく、比較的若手の私が無理やり長を務める必要がある状況でもなかったからです。
今振り返ってみると、明らかにマネジメント職を行うには準備が足りていませんでした。
その部署の仕事においては、ほぼすべてのことに関して判断ができるようになっていましたが、なぜ準備不足だったのか。
本稿では、いったい何が起こっていたのか、どのようにしてそこから抜け出したのか、そしてどのような境地にたどり着いたのか、そのあたりの話を綴っていきたいと思います。
目的
初級〜中級管理職が、組織を率いるための思考法を検討する。
結論
自分のリーダースタイル/マネジメントスタイルを確立し、日々改善していく。
検討結果
プロローグ
最初のマネジメント職を命じられる時、多くの人は「実務に優れているから」という理由で命じられることが多いのではないでしょうか。
基本的には、会社はマネジメント職の経験・実績が無い者を登用するわけですから、マネジメントとは違う部分で評価して登用するしかありません。
その違う部分の代表格としては、やはり「実務の手腕」になると思います。「実務で成果を上げている者は、マネジメント職もできるだろう」と会社に信用され、マネジメント職登用にいたる。これが素直な考え方ではないかと思います。
実務で大きな成果を出すためには、専門分野のロジカルな思考も必要ですが、対人スキルや人の扱い方など、マネジメント職に通じる能力も必要です。ということはつまり、実務に優れている者はマネジメント職もできるだろうと期待されても不思議はありません。
一方で、実務の手腕に優れていても、マネジメント職を行う「準備ができていない」人がいるのもまた事実です。
「準備ができていない人」の特徴は、マネジメント職に登用された途端に成果が出なくなる人です。
単に成果が出なくなるだけならまだ良いですが、通常、さまざま問題が同時に起こっている場合が多いです。
多くの場合で共通しているのは"雰囲気の悪さ"。最近の言葉で言うならば、心理的安全性の低さ。当然、そのような状態では成果は出にくくなります。
これが起こる原因としては、例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 高圧的な態度やロジックの鬼詰めなどをはじめとしたパワーの空回り
- リーダーシップが欠如しており矢面に立てないなどのパワー不足
- トラブルメーカーの問題をまるくおさめられないなどの人間力不足(経験不足)
実務担当として優秀だったメンバーも、マネジメント職になった途端に性格が変わったり、肩に力が入って豪快な空回りをしているような場合もあります。
そもそも、大多数の人は自分の専門分野の能力を高めることを重要視して、能力構築をしてきているはずです。つまり、マネジメントの訓練などは受けてきていないのですから、このような状態になっても不思議ではないわけです。
マネジメントも他のたくさんの仕事と同様に、やりながら改善されていくものだと思います。ですから、最初は小さな問題が発生していても、毎日奮闘しているうちに実力がついてきて、うまくまわるようになってくるはずです。
しかし、マネジメント職になると同時に大きくつまずくような場合は、あきらかに「準備ができていなかった」と捉えるのが素直でしょう。
私も、その一人でした。
衝撃
係長クラス職を拝命し、正式に責任を負う立場になったことで、不思議なことに今まで見えてなかったものがはっきりと見えるようになりました。
それは、自分が思っていた組織の実力と、実際の組織の実力のギャップです。
全身にズシンとくる衝撃がありました。
自分がこのくらいできるのだから、他のメンバーたちもこれくらいできるんだろう。
だから、組織全体としては、このくらいの成果はでるだろう。
これは大いなる誤算でした。
"こんなにも、できないのか"
最初のつまずき
マネジメント職には、結局のところ実務の能力が認められて昇進する人が多いと思います。
つまり、その部署の中で実務の能力がトップクラスの人です。
みんなプロなんだから、きちんとできるのだろう。自分がこのくらいできるのだから、他のメンバーたちもこれくらいできるんだろう。
自分の中では特に高い期待を持っているという認識はなくても、結果的には期待値が高く、それが組織の実力との間にギャップを生んでしまうことは、よくあることではないでしょうか。
これが、最初に訪れるつまずきのポイントです。
これは、メンバーの実力が高いとか低いとかの問題ではないのです。それがどうであっても、経験豊富なマネージャーならば、適切に対応できます。
つまり問題は、長である自分が現状認識を誤っていることです。
現状をありのままに受けいれることの難しさ
ただ、その現状認識を変えていくことは非常に難しいのです。
なぜでしょうか。
現状に合わせて自分の期待値を下げる、つまり成果のレベルを下げると、自分自身の能力や価値が下がってしまったかのような感覚になるからです。
リーダーになる前は組織の中で上位の成果を収めており、能力が認められていた。しかし、リーダーになると、その組織の平均値が自分の能力になったように感じてしまいます。
あたかも、自分の能力が低くなったと評価されているような思考になるのです。(実際には、そのようなことはないのですが)
つまり、組織への期待値を下げることができないのです。
このように、これまで高い評価を受けてきた経験が悪い方向に作用し、現状をありのままに受け入れることを難しくしているのです。
この思考は、ゲームチェンジを認識できていないために起こります。
現実には、リーダーになる前と、リーダーになった後では、すべてのルールが変わっています。
リーダーになった後は、自分が成果を出すことが成功ではなく、メンバーを成功させることが、リーダーの成功です。
このようなことは、リーダーを命じられるほどの実力者であれば、あらかじめ教科書的な内容として頭には入っているでしょう。
しかし、現実世界で体現するには、もう一皮むける必要があるのです。
負のスパイラルはどのように生み出されるか
当たり前すぎて何を言い出すのかと思うかもしれませんが、上司は、きちんと成果が出るように部下とコミュニケーションをとります。
しかし、実際のところコミュニケーションが機能していないケースは意外に多いです。
部下の仕事の状況を見ていると、上司は悪いところがすぐに分かります。そのため、それを直すような指示を出します。
しかし、それが適切な内容になっていないケースが多いのです。
どういうことでしょうか。
上司は、メンバーが気づけていない仕事上の悪いところをすぐに気づくことができますが、なぜメンバーがその悪い結果にたどり着いた思考のしくみを分かっていないからです。
ゴールは同じでも、そこにたどり着くまでの考え方は、千差万別、十人十色です。
つまり、その人の考え方にあった、テーラーメイドの指示・コミュニケーションをしなければなりません。
そこが出来ていない場合が多いのです。
そのため、上司からすれば非の打ちどころのないロジカルで筋の通った話しをしているつもりでも、部下は理解できていないことがあるのです。
- 上司・・・なぜ伝わらないのだろう
- 部下・・・何を言われているのだろう
心理的安全性が低い環境であれば、メンバーは理解できていないということを伝えることもできません。
その結果、部下は仕事がうまくいっていないという旨の報告・相談を繰り返すことになります。
経験が浅いマネージャーは、なぜ伝わないのかが、分かりません。
これはマネージャーが、頭が悪い、性格が悪い、自己中とか、そういうことではなく、経験が足りないのです。
元来優秀な人がマネージャーを担っていることが多いはずです。
このような状況では、上司もフラストレーションが募ります。
部下も良い結果が出ず、上司とのすれ違いが繰り返され、次第に自信をなくし、消極的になっていきます。
典型的な負のスパイラルに陥ります。
まず最初に気づかなければならないこと
そもそも、上司の目線で話した話を理解できるのは、上司に実力が近い者です。
前述のマネジメント職に昇進するときのしくみからして、上司はその部署の中でトップクラスの実力者であることが多いでしょう。
つまり、上司の目線で、そのまま話してしまったら、その話を理解できる者は一握りの者のみなのです。
何もフィルタをかけずに周りを見渡してみてください。
マネジメント職に登用されている者は組織の中でごく一部、つまり、全従業員の中の5%とか10%とか、そのくらいではないでしょうか。
マネジメント職に登用される者は、他のメンバーとは何かしら違いがあるユニークな存在なのです。
事実として、自分は他の従業員とは違うという側面があることを、認識しなければなりません。これは希少な存在だということで、傲慢になるということではありません。
極端に言えば、組織の中で、自分の方が希少な意見の持ち主であるということを自覚するということです。
これはどういうことかと言えば、上司は丁寧に他の従業員とコミュニケーションし、価値感、立場、考え方などを理解し、共感しなければならないということです。
相手の目線に合わせる
ではどのように立て直していけばよいでしょうか。
相手の目線に合わせるしかありません。
通常、部下の方から上司の目線に合わせることは難しいのです。
もし難なく上司の目線に合わせられる者がいるとしたら、その部下はすぐにあなたを飛び越えていくでしょう。
これは喜ばしいことですが、実際には、そういう者は少ないです。だから、あなたが上司なのです。
部下の目線に合わせることは、上司の仕事です。
仕事ではなく、人を見る
マネジメントのしかたで、もうひとつ重要なことがあります。
仕事を見すぎないことです。
うまくいっていない仕事を立て直すときに、つい仕事そのものしか目に入らなくなってしまいます。
よくよく考えれば、仕事そのものに問題の原因はないでしょう。
原因は人にあります。
つまり重要なことは、仕事ではなく、人を見ることです。
「この仕事をどうしようか」
ではなく
「どうやったらこの部下が成長するだろうか」
この観点でコミュニケーションすることです。
話す内容が大きく変わってくるはずです。
こう考えることによって、自然と上司目線での話しがなくなります。正確には、できなくなるといった方が良いでしょうか。
仕事ではなく、人(相手)を中心に物事を考えるからです。
何はともあれ、まずは相手の思考を紐解かなければなりません。
つまり、相手の目線でのコミュニケーションにならざるを得ないのです。
もちろん簡単ではない
相手の目線で話しをする。頭では理解できます。
ところが、現実には、それは簡単にはできません。
なぜでしょうか。
上司であるあなたは会社から多くの部下や予算を預かり、短期的にもに大きな結果を出す責任を負っています。
実際の場面では、悠長なコミュニケーションをしている時間はないのです。
すべての部下に対して、すべて部下のペースに合わせていたら、時間がいくらあっても足りない場合もあるでしょう。
緊張感のある毎日を送っている中では、上司目線での指示になってしまわざるを得ない状況があるのです。
自分のマネジメントスタイルを確立する
ではどうするのか。
これについては、飛び道具はありません。
学習と実践を繰り返し、自分のマネジメントスタイルを確立し、"たしかなマネジメント能力"を身に着けていくことです。
自分にピッタリはまるマネジメントスタイルは、そのあたりに転がってはいません。
画一的に教科書に書いているようなマネジメントを実践すればうまくいくほど、簡単ではありません。
このような簡単な学習で解決するのであれば、マネジメントに悩む管理職はこの世にいないでしょう。
自分の個性に合わせた、自分のマネジメントスタイルを確立するしかないのです。
何を重視し、どのようなウェイト配分で、どこに力かければよいのか。
そのような考えで、毎日誠実にマネジメントに向き合っていれば、経験豊富なマネージャーがもつ絶妙なマネジメント能力が身についていくでしょう。
どのように学習していくか
ところで、学習はどうすればよいでしょうか。
月並みですが、本を読むことでしょう。先人の経験、英知がつまった良書が多数あります。
私も、係長クラスのマネジメント職に命じれられた時、たくさんの本を読みました。
当時は、ワークライフバランスなどという言葉もなく、昭和の猛烈時代のごとく残業がありましたが、夜な夜な読書をしては、次の日職場で実践する。その繰り返しでした。
マネジメント力を身に着けるというのは、人間として成熟するという側面もあると思います。
私の場合は、これまでの生い立ちの中で人間としての何かが欠落していたので、人間になっていく過程だとも感じました。
(尚、現在でも、ふとした時にその欠如に気づかされるときがあります)
本は、たくさんの気づき、感動、刺激、解決のヒント、モチベーションなどを与えてくれるでしょう。
ですが当然、本を読んだけでは不十分です。学んだ内容を実践し、修正を繰り返し、自分のマネジメントスタイルを確立していくことです。
幸いなことに、実践の場は、毎日、目の前にあります。
エピローグ ~ 15の銘記事項 ~
以上、学習と実践の経験から得た、私のマネジメントの考え方を以下に記載します。
リーダー/マネージャーの仕事
リーダー/マネージャーの仕事を端的に言えば、組織の成果を最大化させることです。つまり、仕事は以下の2つです。
- 最良の戦略を描き実行する
- メンバーの最高出力を引き出す
現在地の評価
メンバーが以下のような状態で仕事をしているならば、リーダー/マネージャーは適切な仕事をしていると言えるでしょう。
- 変化を引き起こすエネルギーに満ち溢れている
- 強い責任感と倫理観を持ち、誠実な行動ができている
そうでなければ、改善していこう。
銘記事項
- リーダーになる前と、リーダーになった後では全てのルールが変わっている。リーダーとしての成功とは、メンバーを成功させること。
- 常に優雅で、前向きで、明るく、機嫌よく、謙虚でおり、良く感謝しよう。私たちリーダーの態度ですべてが好転する。
- メンバーの目線で話そう。リーダーの目線で話しても伝わらない。
- 仕事ではなく人を見よう。「この仕事をどうするか」ではなく「どうやったら、この人が成長するか」の観点でコミュニケーションをしよう。仕事そのものに問題は無い。
- 周囲を見渡してみよう。周囲は自分を映す鏡。周囲にエネルギーが満ちていないのは、自分が冷めているから。
- 周囲の人を喜ばせよう。喜ばせた分、自分に返ってくる。
- 意に反していても「ありがとう」からはじめよう。 相手をつつみこみ、幸せにしてあげよう。
- 自分から変化しよう。相手からは変わらない。自分が変われば相手も変わる。変化できなければ、それまで。
- やっかいなことから逃げないようにしよう。全責任を負って矢面に立とう。逃げない態度が、自分を助ける。
- 言い訳はしないようにしよう。すべて自責と捉えよう。言い訳をするリーダーに、メンバーはついてこない。
- 内心不安でも、自分が出ていけば何とかなる、という自信と余裕を持とう。その通りになっていく。
- すべてが順調なときはしゃしゃりでないようにしよう。メンバーの邪魔をせず、売れっ子にしよう。
- 頭の良さではなく、真摯さで率いよう。頭の良さを重視しているうちは未熟と心得よう。
- 人前で話そう。それがリーダーの仕事と心得よう。
- 労働時間を増やすことで、問題を解決しようとするのはやめよう。いったん休憩でもして、知恵を絞ろう。
おわりに
ご覧いただきありがとうございました。
本稿では、初級~中級管理職の方に向けて、筆者・ポテの経験から得た"考え方"を解説いたしました。
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皆様の人生がより一層素晴らしいものになるよう、少しでもお役に立てれば幸いでございます。